音楽と音の遍歴

編集者のプロファイルの代わりに「音楽と音の遍歴」と称して、海外も含めた音楽体験や旅先でめぐり合った民族楽器などについて紹介したいと思います。まずは高校時代の音楽体験から始めます。

 

音楽と音の遍歴(1)高校時代の音楽体験

高校時代の音楽教師が芸大で藤山一郎と同期であったということで、藤山一郎の思い出話で脱線することもありましたが、極めて熱心に指導していただきました。コリューブンゲンでしごかれたり、ドイツ語やイタリア語の読み方を解説してくれた後、いきなり原語で唄わせられたりしました。おかげで、いまでも「帰れ、ソレントへ」や「サンタルチア」や「ローレライ」や「菩提樹」の原語の歌詞の一部を覚えています。また、普通高校でありながら音楽教育に熱心で、生徒のオケを持ち、なんと朝比奈隆氏の指導まで受けていましたし、NHKの合唱コンクールで優勝していました。また、N響のコンサート・マスターの岩淵竜太郎やソプラノの伊藤京子から金春流の能まで講堂で鑑賞する機会がありました。当時はそういった価値をよく理解していませんでしたが、今から思えばまだ麦飯入りの弁当を食べていた悪童共に豊かな感性を育む教育を受けさせてもらったことは有難いことであったと感謝しています。

 

音楽と音の遍歴(2)50-60年代のJazzとポップス

高校を卒業し、なんとか大学入学を果たしたものの、かなりの重度の結核に侵されており、すぐに療養所送りとなってしまいました。北多摩の山の中、唯一ラヂオだけが楽しみであるという状況の中で立川のFENから流れてくるJazzやアメリカンポップスを聴いていました。毎週末に流れてくるFire House Five(消防5人組)でデキシーを知り、チャーリー・パーカーやアメリカンポップスのヒットチャートも聴きました。この後、40年後にニュー・オルリーンズでFire House Five Plus Two(80年代に2人を加えて再編成)のLPと巡り合えましたが、詳しいことはまた後で触れます。

また、この療養期間中に患者の慰問用の電蓄でベートーベンやバッハを聴き衝撃を受けましたし、イタリアオペラが来日し、個室でTVを入れられたお金持ちの患者に招かれて鑑賞することができました。

復学なった60年代初期には若者文化が爆発しており、ジャズ喫茶、シャンソン喫茶、音楽喫茶(田園など)、歌声喫茶を経験しました。銀座の「ACB(アシベ)」は高級すぎて行けませんでしたが、新宿の「ラ・セーヌ」には年上のOLが連れて行ってくれ、藤沢嵐子とオルケスタティピカ東京やシャンソンの生演奏を聴くことができました。また、渋谷では、アントニオ古賀、ジェリー藤尾、渡辺とも子、エセル中田、バッキー白片とアロハハワイヤンズなどを聴きました。友人の大学祭ではパラダイス・キングが出ていましたが、まだバンドボーイをしていた前座で坂本九や森山加代子を聴きました。この後、坂本九や森山加代子はTVで大ブレークしました。日航機事故では、会社の逸材を失い社葬に参列しましたが、九ちゃんともお別れになりました。九ちゃんの「上を向いて歩こう」は奇しくも30年後にミャンマーの民族楽器で聴くことになります。

この頃、大流行していた学生のダンスパーティでは豪勢にもブルー・コーツやシャープス・アンド・フラッツでジルバを踊ることができました。また、Jazzスポットでは煙草の煙にむせながら松本英彦などの爆音を浴びました。新宿の歌声喫茶「どん底」には寮の先輩が連れていってくれ、ロシア語の手ほどきもしてくれましたので、「ともしび」、「カチューシャ」、「モスコーの夜は更けて」などをロシア語で歌うことを覚えました。これに関連しては、伸びのある歌声の若き日の加藤登紀子のロシア民謡のLPがあります。加藤登紀子は学生時代にシャンソンコンクールでデビューし、ロシアにいったりして芸域を広げていきましたが、「知床旅情」や「百万本のバラ」のヒットはずっと後です。

その他、コンパでは猥歌で盛り上がり寮歌で締めるというパターン、安保のデモでは労働歌、神宮球場では応援歌と、支離滅裂な体験ではありましたが、ある意味一番レベルは低いものの若いが故に可能であった音楽体験の時代であったと思います。

 

音楽と音の遍歴(3)江戸情緒、京情緒、中国音楽

悪友共は皆卒業していき、それと同時に猥歌と寮歌にも別れを告げて研究室に残ったのですが、せっかく東京に出てきたのだから江戸文化を勉強しなければと思い寄席通いを始めました。落語、講談、漫才は当然のこと、そこで巡り合ったのは柳家三亀松の都都逸や小唄、さらに新内の岡本文弥一派の発表会にも出かけました。「三千世界の烏を殺し・・・」とか新内の「明烏」などを聴いたわけです。都都逸や浄瑠璃は音楽か?と言われるかも知れませんが。また、日本橋の三越劇場では文楽の公演がかかりましたので人形浄瑠璃にも親しみました。

春休みに家に戻ると券をくれる通人がいて、祇園の都踊りに出かけ、舞妓や芸妓たちの長唄に合わせた踊りを見物しました。夏休みには徳島出身の研究室の友人に誘われて、「よしこの」に合わせて阿波踊りを踊ってきました。40年ほど後に新潟に単身赴任しましたが、「おけさ」と言えば「佐渡おけさ」しか知りませんでしたが、20種くらいの「おけさ」があることを知りました。「おけさ」のルーツは九州とも言われています。当地の盆踊りも関西の江州音頭や河内音頭とまったく調子が違います。

また、実際に本場で聴いたわけではありませんが、35年ほど経って、国内で中国琵琶を聴く機会があり、CDを買い求めてサインを貰いました。日本の琵琶は平家物語のように弾き語りになっていますが、中国琵琶は純音楽のようです。日本の琵琶は筑前琵琶や薩摩琵琶のように九州が本場ですね。発売当時、音がいいので音質チェックに最適と言われたものです。

 

音楽と音の遍歴(4)PAサウンドとラテン音楽

ちょうど、建国200年祭(1976年)の頃、アメリカに長期出張の機会があり、到着したその日が建国記念日で、学生や在郷軍人会のパレードに出くわし、本場の「星条旗よ、永遠なれ」など、彼らのマーチングバンドの音量の迫力に驚きました。

このアメリカ出張の間、休みの日は公園でBBQなどを楽しみましたが、公園ではアマチュアのバンドがエレクトロボイスのPAでカントリーをやっていました。25年ほど後にアメリカに行ったときには、カントリーのCDをいくつか買い求めましたので、後のシリーズで紹介いたします。夜にはトップレスダンサーがカウンターの上で踊るバーなどに繰り出しましたが、勿論音楽など覚えていません。

帰国の途中、休暇をもらって西海岸で遊んで帰りましたが、ディズニーランドではJBLや アルテックのPAを使っているのを知りました。ロス・アンゼルスでは留学中の同僚にメキシコ料理に連れていってもらいましたが、レストランの中庭でソンブレロを被ってギターをもったトリオ・ロス・パンチョスのようなトリオの演奏を1ドル札のチップに渡してリクエストできました。震災の時にゴミ捨て場から拾ってきたトリオ・ロス・パンチョスのLPを聴くたびに思い出す懐かしい思い出です。

 

音楽と音の遍歴(5)東南アジアの音楽と楽器(1)

タイの観光旅行では2胡、太鼓、笛などを買い求めました。ついてくれたガイドは日本で技術研修を受けたことがあり、椰子殻でできた胴の2胡で器用に「お富さん」を弾いてくれました。

タイの笛にはギリシャのパンフルートタイプのものもあり、アメリカ出張の際、ロスアンゼルスのメキシコ人街で買ったメキシコの笛と同じタイプのようです。アンデスの音楽のCDの写真を見ると、同じタイプのさらに大型で低音の出るものもあるようです。雅楽の笙は竹管を上向きにして吹きますが、同じ仲間なのでしょうか。

台湾では高地民族の民族舞踊、スリランカでは同じく仮面をつけた民族舞踊を観ることができましたが、後者は仏教の物語などを伝えるもののようです。ドラなどが鳴らされるにぎやかな伴奏がつきます。

 

音楽と音の遍歴(6)東南アジアの音楽と楽器(2)

ミャンマーでは、涅槃の寝釈迦の大仏観光の途中に昼食に立ち寄ったレストランでビルマの竪琴の演奏を聴くことができました。竹山道夫の「ビルマの竪琴」という小説の中で僧となった安井章二が抱えていた楽器です。レストランの演奏者は日本人が来たと見ると、このビルマの竪琴で「上を向いて歩こう」を演奏してくれました。大学祭の前座のバンドボーイだった九ちゃん、大ブレークした九ちゃん、アメリカで聴いたスキヤキソング、日航機事故で亡くなるまでの九ちゃんも懐かしいですが、ミャンマーでこの曲を聴こうとは思ってもみませんでした。帰途にヤンゴンのアウンサン市場でこの楽器を求めて来ました。

フリーの日が一日あったのでヤンゴンの環状線のSLが引っ張るボロ列車に乗りましたが、この車中で月琴に似た楽器を抱えた弾き語りが来て、なにやら売りにきました。月琴は坂本竜馬の奥さんのおりょうさんが弾いていたと言われています。最近のミャンマーの僧侶のデモのTV報道を見ると、スーレー・パゴダやシュエダゴン・パゴダ、アウンサン・スーチーさんの家の門などが出てきて懐かしい思いがします。

この他、家内がシルクロードの旅で買ってきた土産のおもちゃの二胡のような楽器がありますし、その他に竹を細かく割って指で弾くものや金属の板を指で弾く楽器や土の笛もあります。インドネシアにはジュエゴクという音楽があって、オーディオベーシック誌夏号の付録にCDがついていましたが、巨大な竹の楽器やその低音の出る仕組みなど、非常に興味深いものです。世界には本当にいろいろな音楽と楽器があることを知りました。モンゴルの馬頭琴、ポリネシアの音楽、バリ島のガムラン、インドのシタール、チロルのヨーデルやチターなど、まだまだ聴きたいものがあります。日本でもいろいろな民族楽器を取り扱っている店もあるようです。

    http://www.catalog-shopping.co.jp/shop/shop14.html

 

音楽と音の遍歴(7-1)ドイツとスイスの音楽その1

ドイツには1990年前後に2回、また2002年にドイツとスイスに出張で行きました。訪れたのはデユッセルドルフ、ケルン、ボン、フランクフルト、ウィズバーデン、フライブルグ、バーゼルの諸都市です。

まず、最初に驚いたのは、ドイツの駅や空港や見本市会場のPAの明晰な音で、とても日本のPAの比ではありません。ヒットラーやゲッペルスが洗脳に使ったという伝統があるのかも知れません。

夜にはケルンのコンサートに行ってみましたが、プレヴィンがロス響を率いて来ており、ドイツのホールでアメリカのオケのフランス音楽(ラベル)を聴くという体験をしました。コンサートのインターミッションには、ロングドレスを着た女性達や紳士達がワインを楽しむというエレガントな雰囲気を楽しむことができました。

日曜にはボンの古い教会に行ってみましたが、黒板にはミサの予定表などが書かれており、いまだにバッハの教会カンタータが演奏されていることを知りました。ベートーベン・ハウスでは古いピアノが置かれていましたが、後に、中古レコード屋でこのベートーベン・ハウスで録音されたカザルスらのベートーベンのピアノ3重奏「大公」のLPを見つけ、懐かしくなって購入しました。ピアノの音がぼこぼこ鳴っていますので、ベートーベン・ハウスにあった、あのアップライトのピアノが使われたのかなと推察しています。

これらの出張の際、ビジネスパートナーのドイツの会社のマネージャー達とは音楽の話で親しくなり、ドイツ民謡のCDをいただきました。こちらからは、エルンスト・ヘフリガーがドイツ語訳で歌った日本の童謡のCD)を贈ったりしました。「叱かられて」や「月の砂漠」など、訳もわかりやすくへフリガーが雰囲気をうまく捉えています。明治の昔、日本の小学唱歌はアイルランド、スコットランド、ドイツ、オーストリアなどの民謡などに範を取ったことは良く知られていることです。庭の千草や蛍の光やローレライや野ばらは我々の脳裏に染み着いていますし、これらのべースがあってか、Winter Reiseやケルティック・ウーマンもしっくり来ます。

 

音楽と音の遍歴(7-2)ドイツとスイスの音楽その2

スイスのバーゼルでは、教会の前の広場のノミの市で羊飼いが使うと思われる角笛を買いましたが、室内だとびっくりするくらいの大きい音がでます。また、バーゼル大学の先生が、こちらが音楽好きと知ってディナーの後にバーゼル郊外の教会のSiebermanのオルガンを見せに連れていってくれ、各地のSiebermanで弾いたオルガン曲集のCDを頂きました。このSiebermanのオルガンは素晴らしい音がします。また、バーゼル大学のポスドクのお嬢さんに案内してもらってバーゼルの音楽博物館も行きましたが、展示が非常に充実しており感心しました。ここではハープシコードなど古楽器のCDを買い求めました。時代毎の鍵盤楽器の音色が楽しめます。

国は変わりますが、ケルティック・ウーマンというDVDを見ていたらアイリッシュ・ホイッスルらしいものが演奏されています。これはケルト民族音楽を代表する楽器だそうです。また、ケルティック・ウーマンの中には中世ではよく使われたフィドルを演奏する女性がいます。

こういったオルガンや古楽器がオーディオ装置できちんと再生されているかは、ナマを聴く機会がないので難しいし、判断に危険をともないます。Archivのアナログでは、使用される楽器の由来が記載されているので、それらを参考にしたり、上記のような博物館で売っているCDを買い求めて自分の基準を較正する必要があります。

 

音楽と音の遍歴(8-1)ごみ捨て場から来たお宝盤(1)

阪神大震災で家を建て替える間、壊れずに残っていた神戸の他社の社宅に仮住まいをしていました。周囲は壊滅状態で、壊れた家具やステレオがどんどん廃棄されていきます。その中から使えそうなスピーカーなどを救いだしましたが、ステレオが廃棄されると当然、レコードやカセットも廃棄されます。それらを全部救い出すのが、しばらく続きましたが、いろいろなものが集まりました。

歌謡曲では、都はるみ、高峰三枝子、金田たつえ、霧島昇、田端義夫、高田浩吉、さとう宗幸、大川栄作など。都はるみは最近まったく同じCDが出ています。

同様に拾ってきたスピーカーなどは手持ちのアンプやFMチューナーなどと組み合わせて震災の火災で丸焼けになった部下の建て直した家にリサイクルして行きました。

 

音楽と音の遍歴(8-2)ごみ捨て場から来たお宝盤(2)

Jazzとポップスでは、ジョン・デンバー、キングストン・トリオ、ブラザース・フォー、サイモン&ガーファンクル、トリオ・ロス・パンチョス、シーナ・イーストン、阿川泰子、HiFi Set 、庄野真代、柴田ハツミ、長谷川きよしなど。

変ったものとしては、「ベルサイユの薔薇」のライブで鳳蘭、榛名由梨などのスター総出演で、ヅカ通に言わせると本当のお宝ものらしいです。その他、八代あき、石原裕次郎、小林旭、森山良子、高橋真梨子などもいつのまにか揃っています。これらのポップスは音もいいし、「ベルサイユの薔薇」も舞台の様子がリアルです。

酔いが回ってからの愛聴盤は、霧島昇、田端義夫、小林旭などですが、かって音楽好きだった熟年達が揃ったときに、ジョン・デンバー、キングストン・トリオ、ブラザース・フォー、サイモン&ガーファンクル、トリオ・ロス・パンチョスなどをかけると大変喜ばれます。

 

音楽と音の遍歴(9)スペインとポルトガル

スペインは出張でバルセロナに立ち寄った後マドリードにいきました。マドリードでは現地法人の関係者にいろいろ案内してもらいましたが、残念ながら本場のフラメンコを見るチャンスがなく、途中CDショップに立ち寄ってお勧めのフラメンコのCDを買い求めました。フラメンコギターのシャープな立ち上がりを再現するかどうかは装置のチェックに最適です。また、美人デュオのCDも買いましたが、これが現代のスペインのポップスかというもので、最近の欧米音楽でありながら、どこかスペインの雰囲気を残したものです。Japanese Popsのスペイン版というところでしょうか。

仲人をした社の若い人がポルトガルに新婚旅行に行き、ファドのCDをお土産にもらいました。ファドは独特の哀愁を帯びた旋律がポルトガルの演歌といったところで、このCDのオバチャマはポルトガルの美空ひばりに相当する国民的な人気歌手だそうです。

スペインでは、以上の外にいくつかクラシックのCDをいただきましたので、それらも添付しておきます。さすが芸術の国でジャケットも芸術的です。

なお、CDではないのですが、マドリードのCDショップでは音楽史を現したポスターを売っていましたのでこれも買い求めました。何枚かのセットで買い求めましたが、手元に残っているものの中からバロックのポスターが残っています。

 

音楽と音の遍歴(10-1)音楽とオーディオの本(1)

欧米では音楽の本などのコーナーが充実しています。欧米出張の際は、こういった音楽の本やオーディオ誌を探して見ることにしていました。

アメリカで買った「Music of the Western World」という本がその一つです。この本はエジプト、ギリシャの音楽から、20世紀のシェーンベルクの12音技法に至るまで、カラー写真入りで詳しい解説がなされており、これを紹介するだけでも1年間くらいかかりそうです。

アメリカで買ったオーディオ誌は「Sterophile」、「the absolute Sound」、「Listener」です。「Sterophile」はステレオ誌、「the absolute Sound」はステレオサウンド誌の規範となったものと言われています。日本のオーディオ誌は美麗な写真で「見せる」構成になっていますが、向こうのオーディオ誌は「読ませる」構成になっており、批評もなかなか厳しいものがあります。写真の「the absolute Sound」誌には1999年の「Golden Ear(Yearではない) Awards」の特集がありますし、写真の「Listener」誌にはソニーがSACD機を発売したとの記事がでています。日本ではまったく知られていない機器があったり、日本ではマイナーなメーカーと見られているメーカーが大きく取り上げられていたりして面白いものです。これらの雑誌のweb-siteを下記に示します。

http://www.stereophile.com/

http://www.avguide.com/the-absolute-sound/

このstereophile.comにはいくつかのblogへのリンクがあります、ざっと見ていたら、長岡先生の「こんなスピーカー見たこと無いUSA版」みたいな本「Loudspeaker Design  Cookbook」の記事がありました。Analog誌は中国語訳が出ているそうですが、日本のオーディオ誌やblogも、もっと海外に打って出るとか交流ができると面白いと思います。

 

音楽と音の遍歴(10-2)音楽とオーディオの本(2)

音楽とオーディオに関する本は良く見る方だと思いますが、その中からいくつかを挙げておきます。出原真澄さんのマルチアンプの本は名著だと思います。

オーディオ誌の付録で参考になる資料がときたま見受けられます。そんな中で真空管の写真があり、額に入れて保管しています。

日本のオーディオ誌は良くご承知のことと存知ますが、一般の趣味誌でもオーディオが取り上げられることがあります。「Pen」や「男の隠れ家」がそれです。Pen誌2002, No.91では「オーディオの究極」、男の隠れ家誌2003, Januaryでは「自分だけの音楽空間」という特集がありました。週間朝日で歌人の俵万智さんの「小さい旅みつけた」という特集がありましたが、1999年8月6日号の埼玉編に川越市の「アマデオ」というレコードショップを兼ねた喫茶店の記事があり、記事を頼りに行ってみました。このときの俵万智さんの歌は「今ここに確かにありて 消えてゆく音と香りは 似たものどうし」です。

 

音楽と音の遍歴(11Jazz、ミュージカル、ロック、カントリーなど

アメリカ出張の際には、夜はジャズ・スポットに行くことにしていました。ワシントンのジョージタウンのあるCDショップで購入した甘い歌声が聴けるかとおもって買った可愛い娘のCDはとんでもないハードなロックでした。また、ブロードウェイのミュージカルやラスベガスのショウを観る機会がありましたが、筋書きがたわいもなく、ほとんど寝ていて何も覚えていません。帰宅してから、家内や社の女性達に何てもったいないことをすると叱られました。ワシントンやニューヨークにはストリートミュージシャンがいて、ただただドラム缶を叩いているストリートドラマーがいたりします。ずっと以前のアメリカ出張の間、公園でアマチュアのバンドがエレクトロボイスのPAでカントリーをやっていたことを述べましたが、その頃はまだCDはなく、1989年以後のアメリカ出張で買ったカントリーのCDが残っています。

 

音楽と音の遍歴(12)ニュー・オルリーンズの音楽

外国旅行で思い出に残ったことの一つは、ニュー・オルリーンズの学会出張の際フレンチ・クオーターを歩いていると、ドアの開いたバーから、デキシーやニュー・オルリーンズ・ロックやケイジャン・ミュージックが聴こえてきた雰囲気です。ミシシッピー川を航行する外輪船に乗ったところ、天候が悪く乗客が少なくて下ろされてしまいました。土産に買ったものは、絵葉書とジャズバンドの人形と外輪船のおもちゃです。

本場のデキシーランド・ジャズについて少し詳しく紹介します。着いた日が日曜でしたので、市内見物に出かけましたが、そこここでストリートミュージシャンがドンチャカやっていました。ランチをとったレストランのバンドと道路でやっていたバンドのCDを買い求めました。空き缶には1ドル札を入れ、CDは1500くらいでした。一日遅れで来た家内はルイ・アームストロング公園に行ったそうですが、誰もいなくて怖くなってすぐ帰ってきたということでした。さらに、フレンチ・クオーターに近いミュージック・ファクトリーというCDショップでヴァイニル(LP)はないかと聴くと2階だと言われて階段を上ると、そこはオールド・ジャズやカントリーやケイジャン・ミュージックやニューオルリーンズ・ロックの宝庫でした。昔聴いたFire House Fiveはないかと店員に聴いたら、しばらく考え込んでいて、“Oh,fifties!(50年代ものだね)”と言って出してくれました。この店はカトリーナの被害でどうなったか心配していましたが、元気で営業しているようです。

http://www.louisianamusicfactory.com/

ニュー・オルリーンズの最後の夜は、traditional styleのJazzをやっている、プリザーベーション・ホールに行きました。とてもホールとは言えない様なボロ小屋で板のベンチに腰掛けて聴きましたが、前の方は床の上に座っているので、頭の上で吹くトランペットを聴くことになります。ここで買ったCDの再生がボロ小屋の生演奏のように聴こえるか、装置の再現能力のひとつの尺度として使用しています。これらのケイジャン・ミュージックとディキシーランド・ジャズのCDが残っています。アコーディオンの弾き語りをやっているのが、ケイジャン・ミュージックで歌詞はフランス語です。また、ケイジャン料理というのがあって、蛙とか鯰を料理するそうです。写真ではプレザーベーション・ホールの中の演奏のもようと小屋の外側がわかります。クラリネットを吹いているオバサマは道路でやっていたバンドのリーダーで、ブリキの波板をぶら下げたバンドの一人がそれを擦ってガチャガチャ音を出していましたので、このオバサマに聞いてみたところ、Wash Board、つまり洗濯板ということでした。日本では洗濯板は木製ですが、向こうではブリキ製なのです。

この2002年の12月のニュー・オルリーンズが最後の外国旅行となりましたが、機会があれば、また音楽と音の遍歴のページを付け加えていきたいと思っています。

この10間は外国に縁がありませんが、BS放送のおかげで、ウイーン楽友協会、ベルリンフィル大ホール、コンセルトヘボウ、ゲヴァントハウス、セベランスホール、ドレスデン・シュターツカペーレ、ルツェルン・カルチャー&コングレスセンターなどなど、世界の著名ホールの雰囲気を居ながらにして楽しめることは有難いことだと思います。

 

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